海上から眺めるヴェネツィア

左に造幣局と国立マルチャーナ図書館、中央が鐘楼、右にドゥカーレ宮殿。「アドリア海の真珠」と讃えられた絶景。船でヴェネツィアにやって来た外国からの客人が目にする光景が、まさにこの眺め。ヴェネツィア共和国時代から変わらぬ美しい眺めだ。

海からのアプローチは見ての通り、城壁も無ければ砲台も無い。共和国の中枢であるドゥカーレ宮殿を守る物は何一つなく完全な丸腰である。宮殿自体も要塞とは程遠い華麗な建物だ。つまり、ヴェネツィアは敵に攻められることは何一つ想定しておらず、戦国時代とも言える中世において信じられない街づくりなわけだが、それこそがヴェネツィアの強さの表れでもある。

ヴェネツィア周辺の平均は水深はわずか数メートルであるため、潮が引いたときだけ海上に顔を出す部分が点在する。つまり、大型船舶が航行できる航路は限られており、敵が近づいてきた際はこの水路を示す杭を引き抜くことで、敵の行く手を遮ってきた。当時無敵を誇ったオスマントルコの軍勢も、ライバルであったジェノバ艦隊も、このラグーナを越えてヴェネツィアの領土にたどり着けなかったのである。事実、ヴェネツィアは一度も上陸戦が行われておらず、この自然の要塞こそ、ヴェネツィアが圧倒的に強かった大きな要因の一つだ。

海上から眺めるヴェネツィアの絶景